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富士には月見草?がよく似合ふ。

[2018.12.26]

晩秋のある週末にふと「そうだ富士を撮りに行こう」と思い立った

数年前から妻は父親から譲り受けた高級デジダルカメラを抱えて、小石川にある植物園あたりを散策し、花や蝶の撮影に 興じていた。 無趣味な私はそれを羨ましく思っていたわけでもないが、「そんならこっちは富士で勝負してやらー」と、日曜の朝すこしばかり早起きをして、妻から借りた高級カメラとともに富士へと向かった。

朝焼けの富士を撮りたいなどど 漠然と考えていたが、調布インターあたりで日の出を迎え、到着した頃には周囲は既に朝の光に満ち溢れていた。 河口湖畔から富士と対峙して、静寂の中にひっそりと、しかし圧倒的なスケールで迫るそのさまには圧倒された。

慣れない手つきで、条件を考えながら何枚か撮影したところで、足元の黄色い花に眼が止まった。『富士には月見草がよく似合ふ』ふっとそんなフレーズが頭に浮かんだ。富士をバックにこの花を撮ろうと考えたが、何しろ足元からのアングルである。初心者の私はかなり苦労をしながらさらに数枚撮り、風景写真なるものが撮れたことにして早々に帰路に着いた。

家に帰って「富嶽百景」を読み返した。 太宰が昭和13年秋、御坂峠(山梨県)の茶店に長逗留したさいの小編で、たしか中学の現代国語の教科書に載っていたと記憶している。『月見草。。。』のくだりは、まさに河口湖畔からバスで茶店にもどる際の描写であった。

 撮ってきた写真のデータをパソコンに移して、いろいろ眺めながら考えた。この花はなんだろう。月見草は季節はずれか。茎の長さからすると菊かその仲間だろうか。いろいろ思案していると、そばにいた妻が一言「花が多すぎる』。

太宰が見たら『まるで風呂屋のペンキ画じゃねーか』とでも言うだろうか。

 

折角の写真なので、額に入れ殺風景な待合室に飾ることにしました。1月は恒例の『富士」の絵と共に。

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